第38回 日本臨床神経生理学会学術大会報告

 平成20年11月12〜14日,神戸にて,日本臨床神経生理学会学術大会が「臨床神経生理学の限りなき可能性をさぐる」というテーマのもと,開かれました。今回は都合により,12日夕刻のサテライトシンポジウム1「第9回脳と睡眠懇話会」から,翌日の総会までしか滞在できませんでした。ここでは,13日午前中のシンポジウム9「睡眠研究の進歩(日本睡眠学会合同シンポジウム)」について,ご報告いたします。

 シンポジストは5名で,取り上げられた話題は次の通りでした。1)小曽根基裕先生(慈恵医大・精神科:CAPの睡眠研究・医療における有用性),2)寒重之先生(情報通信研究機構未来ICTセンター:EEG/fMRI同時計測によるK-complexの評価),3)土生川光成先生(久留米大・神経精神科:PTSDと睡眠),4)宮本雅之先生(獨協医大・神経内科:神経疾患と睡眠),5)三島和夫先生(精神保健研究所精神生理部:分子生物学的手法の睡眠研究への応用)。

 印象に残った点をあげると,1)では,CAP率(=CAP時間/ノンレム睡眠時間)は若齢から40代にかけて減少し,その後,再び増加するという図が提示されました。CAPが睡眠の不安定性なるものを反映するとすれば,不惑の40代というのは安定した睡眠をとれるのでしょうか。あくまで,健康ということが前提かもしれませんが。

 生理学的意義がはっきりしないK-complexを扱った2)の発表は実に意欲的にみえました。自発的に生じたK-complexの始点でtime-lockしたfMRI信号と心拍数の変化が詳細に調べられていました。余談にはなりますが,前夜の「脳と睡眠懇話会」において,スピンドルがどういう波かわからないせいで,K-complexのみを用いて睡眠段階2の判定を行うラボがあるという,にわかには信じられない話を聞いたのも,収穫の一つではありました。

 3)のPTSDについての発表では,身体活動量計と睡眠日誌に加えて,夢日誌をつけていただく有用性が強調されていました。PTSDになってからいつ測定(研究参加)するかにもよるでしょうけれども,思い出したくもない記憶が下手すると強化されてしまう可能性はないのか,やや疑問に感じました。とはいえ,症例数を集めるのがなによりたいへんかと思いました。

 三島先生による発表は時計遺伝子が中心でした。演者のラボでも,たしかPer1に関する測定系を確立すべく,努力されているとのことでした。そして,時計遺伝子の情報が疾患のどのような特性と関連するのかをしっかり把握する必要があると強調されていました。これは時計遺伝子に限らず,セロトニンなどほかの体内物質に関する遺伝子についてもあてはまる大切なことでしょう。

 このシンポジウムは90分でしたが,5題の発表は多いように思えました。なぜなら,各発表のあとに1つか2つの質疑があるだけで,総合討論もなかったからです。聴衆は受け身にならざるをえない。また,副題にあるように,本シンポジウムは日本睡眠学会合同として開かれました。今回が初参加なので,自分がよくわかっていない面もあるのかもしれませんが,合同で行う意義,つまり,なぜ合同でなければならないか,がぼやけているようにみえました。

 なお,「睡眠研究の進歩」という主題であるだけに,日本睡眠学会・理事長である清水徹男先生と同・理事の内山真先生のお二人が座長をされる予定でした。ところが,実際にはどういうわけか,清水先生お一人でした。こうした場合,欠席の理由が報告されるのが通例ではないでしょうか。今回はなにもありませんでした。いや,なかったようです,少なくとも私が居眠りしている間にアナウンスされなかった限りは…。

労働安全衛生総合研究所 高橋正也 記