第9回World Congress on Sleep Apnea参加記

 2009年3月25日−28日に韓国ソウルのCOEX Seoulにて第9回睡眠時無呼吸国際学会 9th World Congress on Sleep Apnea (WCSA 2009 Seoul) が開催されました。ソウルの空港からリムジンバスで直接会場までアクセスできる大変便利な会場でした。この学会は当初2008年11月15日が演題締め切りでしたが、何回も締め切りが延長され、初回の締め切りにあわせて応募した演題が採用されるのかどうかわからないままに2009年2月末まで待たされたことがあり、演題が集まりにくかったのか、いろいろ憶測を呼んだ学会でした。
 学会会場は巨大ホテル、コンベンションセンター、地下に広がる巨大ショッピングモールがあり、近代的なところでした。

 3月25日夕方にOpening & Welcome Receptionが開始されました。学会会場は部屋の外が一般の通行人も通るスペースであり、テレビカメラや写真のカメラマンに取り囲まれて、レッドカーペットの上に立つ主催者たちのテープカットから始まり、韓国の伝統舞踊がセレモニー会場へ参加者を導くという、とても派手なものでした。この日、ポスター発表のためにポスター掲示を行いましたが、ポスター演題はおよそ190集まっていました。この日入手したプログラムにて、非常に多くのinvited speakerを集めていたことがわかりました。25のシンポジウムにはシンポジウムごとに演者が4人で合計延べ100人、さらにPlenary Lecture3回など、多くの人を呼び集めて開催されたことを知りました。早朝に行われるMeet the Professorは別料金で合計12名分用意されていました。
 発表された内容は、循環器領域ではOSAを夜間の間歇的な低酸素だけでなく血管内膜に炎症を起こすという広い疾患概念としてとらえ、循環器疾患に悪影響を及ぼすこと、いびきの振動だけでも神経筋や頚動脈の変性など上気道に悪影響を及ぼすこと、子供のOSAには耳鼻科、歯科の積極的な係わり合いを求め、ステロイドの点鼻、歯列矯正、鼻中隔湾曲の治療、扁桃腺手術などを推進しないと子供のうちから成人病を作ってしまうなどの報告が目立ちました。OSAの薬物療法として軟口蓋へのボトックス注射、抗うつ薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、炎症性サイトカインに作用する薬剤などが試た報告がありました。治療機器としては、チェーンストークス呼吸や混合型無呼吸にAdaptive Servo-Ventilationを推奨する発表が目に付きました。
 全般的にシンポジウムやプラットフォーム発表は活発でしたが、ポスター発表はポスター掲示のないスペースも散見され、討議する時間もないため、企業展示ブースと飲み物コーナーに比べて閑散としていました。ポスター展示には企業やスポンサーが付いているものは豪華、こつこつやっている発表は質素な掲示物でした。

 なお、RPSGTの更新に必要なAAST (American Association of Sleep Technologists)のCECが取得できる企画はCovedienが主催する夜遅くの会で行われました。事前に私は学会本部にCEC取得に関してメールで質問していたのですが、それに対してメールでの返事はなく、日本のCovedienを通して入手した情報でこの企画を知りました。通常のCEC取得と違い、スポンサーがついているので弁当付で参加費や手数料は不要ですが、講習参加証は自分で自分の名前を記載するとか、講習会では主催者の質問に挙手して早く答えたらごほうびのクッキーをもらえるといった、軽いのりの講習会で、講習会後のアンケートは行われなかったなど、何か文化の違いを感じました。この講習会の中で世界最初のCPAP治療の話を聞けたのは有意義でしたが、アーチファクトとピットフォールの講演は2007年AASMの新しい内容を網羅してないため、疑問を持つようなものが混じっていました。講習が終わって、この講習をAASTがCECとして本当に認めてくれるのだろうか、今でも心配しています。
 今回の国際学会では、幅広い領域の話を聞くことができたのは非常に有意義でした。しかし、医学の発展と経済的な基盤の係わり合いをうまく考えなければ医療がどのようにも変わってしまう危険性を感じました。国際学会では当初の参加者が少なければ、多くの有名人を招待し、その資金を得るために企業にたくさん出させるような手法を直前まで行えば、結局招待講演者はいい思いでしょうが、まじめに当初の締め切りに間に合うように演題応募した一般者は腹ふくれる思いをした上に、Meet the Professorでさらに会費をオプションで払うように求められると、純粋に学問を楽しむ気持ちがしぼんでしまいました。
 また、学会の規模が小さく素朴な段階では、minorな研究であっても、同好の士と巡り合えて友達をつくるという楽しみもありますが、ここまで派手になると、ポスター発表が軽視され、より金をかけて大規模な多数を扱った研究のみに注目が集まる傾向を感じました。エビデンスと一口に言っても、今回の発表の中では、企業が関与したエビデンス、医師や特定の学会などの団体が自分たちの仕事を増やしたくて研究したエビデンス、純粋に科学的興味で調べたエビデンスが混在しているため、何が真実で何は誰かに都合のよいシナリオに載せられているだけのことなのか、本当に正しいのは何かがはっきり見えてこないように思いました。例えば10年後に今回の学会発表でどれだけのものが睡眠の世界で生き残っているのか、見守っていきたいと思いました。
 帰国のためソウル市内から空港へ向かうリムジンバスでは、空気が黄色く感じました。いわゆる黄砂現象でしょうか、遠くの景色がよく見えない気候と学会の内容が何かダブって見えたような気がしました。

枚方公済病院 兒玉光生 記