Sleep 2009(23rd Associated Professional Sleep Societies)参加記

 2009年6月6-11日にシアトルで開催されたSleep 2009(23rd APSS)に参加しました。今回は直前に新型インフルエンザ問題が発生し、一時は参加を断念していましたが、日本国内で流行してしまったことでかえって渡航規制が緩和され、会期数日前に急遽参加を許されました。

 6月のシアトルは気候も良く、会期中ずっと晴天が続き、快適に過ごせました。新型インフルエンザはどこ吹く風、街角でも会場でも、日本のようにマスクをつけている人はほとんどいませんでした。今回会場となったWashington State Convention Centerはダウンタウンの中心にあり、主要ホテルに隣接しているため至極便利で、jet lag解消に細かく休憩を取りながら、自分の興味あるセッションを聞きに行くことが可能でした。

Convention Centerの外観
日本の感覚からは何もかも広すぎるConvention Centerの内部

 今回が私にとっては最初のAPSS参加でしたが、噂には聞いていたがやはり目を引いたのは、展示ブース会場の派手さと大きさでした。自分にとって、それは米国睡眠医療のマーケットとしての規模を感じ取るには十分でしたが、これでも昨年よりはだいぶスペースが小さくなったとのこと。参加登録時にもらった学会カバンも質素で、これはある有力製薬会社がスポンサーを降りた影響だったそうです。またindustry supported eventsも昨年より激減しているようでした。私が睡眠に興味を抱き始めた頃(2000年以降)には、すでに睡眠薬の新薬やRLSへのドパミンアゴニストの適応拡大、SAS治療に対するCPAP機器の改良やASV機器の導入といったブームで、非常に派手になっていったが、そういったマーケティングがほぼ一巡し、米国でのここ5年の睡眠バブルも終焉に向かったのではないかという印象です(これは1996年以降ほぼ毎年出席している立花先生の受け売りです)。そのかわり、薬会社や機器会社がアジアや南アメリカをターゲットとしてシフトしてくるであろうから、そういう政治的、経済的な動きもこういった学会ではとてもよい観察の種になるとのことでした。

展示ブースもすべてを見て歩くと疲れてくるぐらいの多さ
Sleep Technologists(睡眠技士)の求人広告が主に貼られている


 展示ブースとは対照的に、思ったより小さかったのがポスター会場です。それでも合計数百題程度の発表がありましたが、場所が展示ブースの奥であったり、時間帯も他のシンポジウムセッションと重なっていたりして、何となく重要視されていない様子。しかし中には目を惹く発表もあり、個人的には生理検査所見に基づいて地道な研究を続けるヨーロッパ方面の演題など、国内学会とはひと味ちがう内容の濃さに驚かされました。

 一方で口演やシンポジウムに目を移せば、特にOSASやRLSなどに偏ること無く、内容も比較的均等でした。どうやらそれぞれの一頃のブームが研究的にも産業的にも落ち着いたためであったようで、従軍経験者のPTSDによる不眠など、日本では聞けないような面白い話題も聴講できました。なかでも神経内科医である自分が期待して聞いたのが、"Use of objective testing supporting the diagnosis of RLS" というセッションでした。ご存知のとおり、RLSでは診断基準の主要4項目全てが自覚症状に依存しており、ドパミンアゴニストによる治療を念頭に置いた際、いかにproper RLSを拾い上げ、RLS mimicsを鑑別して行くかが関心事となっています。このセッションでは、主にPLMを手掛かりにRLS診断に結びつけるべく、suggested immobilization test中のPLMWやPSG中のPLMSの解析結果が示されていました。各研究者がオリジナルの方法論や解析結果を示し、かなり興味深い内容ではあったのですが、一方で本質的にPLMの出現機構やRLSへの特異性が示されているわけではないこともあり、まだ各患者に応用できる程度に洗練されていないといった印象でした。今後もRLSに対する客観検査の確立にはまだ時間がかかりそうです。

 全体として、専門領域や職域、経験に関わらず参加者間の距離が近く、さまざまな場で実践的な議論が行われているところが本邦の学会とは鮮明に異なるように思われました。国民性の違いもありましょうが、恥ずかしがらずに元々の専門領域を越えて切磋琢磨した議論を行い、少しでも多くのことを学んで持ち帰ろうとする姿は見習って行きたいものです。

名古屋市立大学 小栗 卓也 記