第18回アメリカ睡眠歯科学会学術大会参加記

 SLEEP 2009と一部会期を重ねた2009年6月5-7日に同じくシアトルで行われたAADSM (American Academy of Dental Sleep Medicine) に参加しましたのでご報告します。

 AADSM終了後引き続き参加していたSLEEP 2009で立花先生とお話した際に学会内容をご報告する機会をいただきましたが、AADSMや睡眠歯科についてご存じない方も多いかと思いましたので一部紹介も含めて報告したいと思います。

プログラム

 AADSMはその名のとおり睡眠、特に睡眠時無呼吸症候群のための口腔内装置(OA: oral appliance)に携わる歯科医を主な会員とする学会です。元はAPSSの中の1セッションとして行われていたものが独立し現在の組織になったのだそうです。参加者は毎年増加傾向で、本年は概算で700名でした。

 初日は事前登録制のEducational Course (全5コース)とCourse終了後にPoster Discussion Sessionが行われました。Poster Discussion Sessionは本学会初の試みで、19本のポスター発表予定者に対して1演題5分の発表と質疑応答が行われました。私自身もここで睡眠時の開口量についての発表をしましたが、日本からは他に3本の演題がでていました。内容としてはoral presentationの5演題も含め、半数の12本がOA関連、その他ポータブルモニターの評価、画像診断、質問表によるスクリーニング、ブラキシズム等の発表が行われていました。

 質の高い研究もしくはコンセプトの明確な発表が見られる反面、言わずもがなですがその反対の発表も多かったこと、それぞれの出身、専門分野が違うためか(一般歯科医、矯正医、口腔外科医、この学会ではかなり少数派ですが私の属する補綴医など、歯科以外の方からは同じ歯医者かもしれませんが、日ごろ考えていることが実は随分違います)それらの発表に対して適切な質問、意見が出されていなかったことは聞いていて残念だったのと同時に不安を感じる機会となりました。

 2,3日目は会場が大きなホール1つだけで、終日Invited lectureを中心としたプログラムが催されました。6日は千葉大学の磯野先生の咽頭の解剖と無呼吸についてのセッションで始まり、その後もDr. Grunsteinの今後の無呼吸治療の展望について、Dr. Gozalの小児における無呼吸について、Dr. TufikやDr. Fergusonによるyear review、Dr. Lorenzi-Filhoによる無呼吸と高血圧、動脈硬化、心疾患の関連についてなど、歯科分野に限らない無呼吸に関連した話題が取り上げられていました。直接歯科医の診療に役立つというトピックではありませんが、歯科医が関わっている疾患の総合的な理解を深める為によい機会だと思いました。

開会の挨拶
学会場

 同時に2つの学会(AADSMとSLEEP 2009)に出席できると思って参加している暇な留学生の私としては、何も歯科医だけで集まって話を聞くよりSLEEP 2009で聞けばいいのに、むしろ共通認識や情報交換のためにもそうしたほうがとも思いましたが、短時間でトピックを聞けるので大部分の参加者にとっては便利なプログラム構成なのかもしれません。

 7日はOA治療に関連した講演を中心としたプログラムでした。治療効果、長期予後、顎関節症との関連、CPAP治療との比較などがテーマになっていました。最後に「OAの種類は重要な因子か?」というタイトルのPanel Discussionが行われ会が終了しました。

 今回の学会を通して印象的であり、OA治療の現状を反映していると思ったことがありました。熱を加えて材料を柔らかくし患者が咬んで成型する既製品のOA(一般に安価)と歯科医によるカスタムメイドのOA(一般に高価)について比較しカスタムメイドのOAの効果が高いことを講演したDr. Vandervekenに対してドイツの歯科医から「ドイツでは既製のOAしか保険では認めないとの流れがあり、それに対抗する研究発表をしてくれてありがとう」との趣旨のコメントがありました。同じヨーロッパでもスウェーデンでは無呼吸患者の60%が第一選択でOA治療を受けているそうで、人種差といった身体的な差異はもちろんのこと、保険制度の違いによりOA治療の対象となる患者層が異なってくること、患者にとっても経済的負担に大きな差があることなど色々な視点を含めて情報を理解していく必要があると感じました。

 日本でOA治療が保険適応になってから5年、OA治療が日本の無呼吸治療の中で果たすべき役割を模索する中で、まずは睡眠に携わる方の多くに知ってもらうことが大切だと思います。参加記としてご紹介する機会をいただけたことに感謝しています。

University of British Columbia 津田緩子 記