第7回 脳と睡眠懇話会 参加体験記

 みなさん、こんにちは。臨床検査技師の杉山です。
 日本臨床神経生理学会学術大会(11月29日〜12月1日、in横浜)のサテライトシンポジウムとして開催された「第7回 脳と睡眠懇話会」に参加しましたので、その体験記といいますか、睡眠初心者の感想を思いつくままに綴ってみたいと思います。

 「感想」などとはけしからん、とお怒りになられる方もおられるかも知れませんので、まず言い訳をいたしますと、私は昔も今も、睡眠医療に直接携わったことはありません。数年前まで病院の集団検診部門で血球計算や生化学検査を担当しておりました。府の機構改革で元いた職場がなくなり、異動で「こころの健康総合センター(精神保健福祉センター)・ストレス対策課」にやってきました。当課は保険診療をする部門ではなく、個別相談や啓発事業が主な業務で、私の主な仕事はストレスドック(人間ドックのメンタルヘルス版)での10分間の脳波検査です。たった10分間ですので、できることには限りがあります。眠そう、とか、緊張してるなあ、とか、その程度といっていいかもしれません。入院設備はもちろんなく、現任施設内で終夜PSG検査はまず不可能です。3年前に睡眠のプロ(三上先生)が赴任してきたのをきっかけに、未知の世界を覗いてみたいという全くの興味から立花先生のところに押しかけたのが、ことの始まりです。
 そんなわけで、2年ほどの間でしたが週1回、見学を兼ねてPSGのお手伝いをさせて頂いたのが私の終夜PSG経験の全てです。テキストや論文を読んだり勉強会に参加することで、断片的な知識は増えますが、その間をつなぐ経験が全く足りない、というのが現状です。ゆえに、懇話会の感想を述べることはできても、皆様にご報告、などはご勘弁下さいね。

 懇話会の第1の話題は、京阪奈病院・洛和会音羽病院・同睡眠医療センターの兒玉先生による「Restless legs症候群による不眠を伴った全般性痙攣の一例」でした。30代男性、20歳頃から就床後に両下肢の不快感およびブルンとするような身体の動きとふくらはぎのゾクゾクするような感じ、この不快感が徐々に胸まで上がってきて上肢が持ちあがる、という主訴。終夜PSGでは、覚醒時に持続・周期の短い様々なパターンの筋活動が記録されており、この筋活動は入眠後には消失していました。ASDA1993やWASM2006のPLMスコア基準に該当しない周期的筋活動の解釈について問いかけるものであったと思います。
 診断についてのコメントは医師に任せるとして、技師の立場からはやはり、「身体の動き」や「不快感」を訴える患者のPSG施行時は、実際に動くところや不快感が生じるナマの様子を自分の目と耳で確認すること、終夜は無理でも、せめて入眠まで、できれば最初のREMくらいまではモニターで確認すること、VTR同時記録(PSGと同期できればなおよい)が必須であることを痛感しました。このケースは、日中EEGで全般性棘波が頻回出現していたとのことなので、てんかん性の異常である場合を考えて、通常のPSGよりも電極数を増やすなどの対応も必要かなと思いました。終夜監視でPSGを記録されている経験豊富な技師の方の中には、このような症例に遭遇したことがあるかたもおられるのではないでしょうか?

 第2の話題は、太田睡眠科学センターの八木先生による「Cyclic alternating pattern(CAP)法を用いた睡眠評価例 ―R&K法では評価できなかったこと―」でした。CAP法とは、睡眠中に2〜60秒の短い持続時間で周期的に繰り返す脳波活動を捉え、睡眠の不安定さを数値化して評価しようというものです。まず評価の仕方を解説し、次に実際の解析例を数例紹介して頂きました。
 講演を聞く前に、前もって手持ちの資料にざっと目を通しはしましたが、いまひとつ何を評価しようとしているのかよくわからない、というのが最初の疑問でした。初期にできたR&Kルールでは評価しきれなかった持続の短い覚醒反応を、EEG-arousalとして評価する基準ができ(ASDA1992)、それにも限界が来て、さらに細かく脳波活動を見ていこう、という動きらしいです。ただ、CAPを正しく評価するために、まず単極誘導だけでなく双極誘導も必要となるそうです。また、パターン変化だけでなく振幅の要件も加味することなどから、実際のスコアはかなり熟練が要りそう、客観的な指標として確立するまでには時間がかかりそう、というのが正直な感想です。実際の解析結果を見ても、頻回に繰り返すあいまいな波形の連続に、見ているこちらの目が回りそう、こんなところに手間をかけるなら、少々誤差を含んだとしてもこれこそ自動判定に任せるべきではないか、と不謹慎にも思ってしまいました。そもそも、これは覚醒反応の概念を拡張しただけなのか、そうではない脳の機能不全のようなものを評価するものなのか(ナルコレプシーでCAP率が低下するらしい)、いったい何を評価しているのでしょう? 当日5時起床で朦朧とした頭では、講師が話したかもしれないがやはり解けなかった疑問でした。
 懇話会終了後に、講師の八木先生と少しお話をする時間がありました。CAPのスコアが煩雑そうだったので、判定に迷いはないのかとお聞きしたところ、「それは、迷いますよぉ。」と即答されました。迷いは、やはり多数の記録を判読するしかない、と言った後に、「でも、好きだからできるんだと思います。」と言っておられたのが印象的でした。

 私の未熟な経験の中では、一時期PSGの見学をさせていただいていた折、徐波が出たり消えたり、睡眠段階3になりそうでならない、もどかしい脳波に出会ったことがあります。今から思えばあれがCAPだったのでしょうか。断片的な知識だけでは、出てくる脳波変化がみなCAPに見えてしまう、という珍現象に陥りそうです。やはり、八木先生の仰るとおり、数をこなすしかないのでしょうね。CAPに関心のある会員の皆様、ぜひ何例か解析していただいて、そこから何が見えてきたか、何かの機会にご報告をお願いします。

 というわけで、報告にもならない拙い感想を、徒然なるままに綴ってみました。経験不足の未熟な技師の感想が第一報であるならば、経験豊富な技師または医師の報告・感想を第二報としてお聞きしたいと思います。「脳と睡眠懇話会」に参加された方、ぜひ第二報をお聞かせください。よろしくお願いします。

(大阪府こころの健康総合センター・杉山 恵美子 記)


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