第49回日本小児神経学会総会・子どもの眠り研究会第1回集会に参加して
 2007年7月5〜7日、大阪国際会議場で第49回日本小児神経学会総会が開催され、「子どもの眠り研究会」第1回集会も7月6日に行われた。
 小児神経学会では、東京北社会保険病院小児科神山潤先生の教育講演「小児の睡眠関連病態」、大阪大学大学院子どものこころの分子統御機構研究センター谷池雅子先生が座長をされたワークショップ「神経発達の面から小児睡眠医療を考える」が行われ、小児科医の睡眠に対する関心の高まりが感じられた。しかし、小児の睡眠関連疾患全てに注目が集まっているわけではなくて、レストレスレッグズ症候群 (RLS)やリズムの問題(不登校や慢性疲労など)などのごく一部分だけに関心が集中しているという感じを受けた。特にRLSはADHDとの関連から発達障害を診療する医師で関心が高くなってきている。以前、発達障害を専門とする医師が、ADHDらしき患児が夜に足の不快感を訴えるからRLSかも知れないと言われたので、「家族歴はどうですか?」と尋ねたところ、「家族性があるの?」と逆に尋ねられ、発達障害でRLSが流行りでも小児科医の認識はこんなものなのかなあと思ったことがあった。この学会で某大学が思春期のRLS合併ADHD症例を報告していたが、低フェリチン値にも関わらず、鉄剤投与ではなくて、いきなり小児に安全性の確立していないプラミペキソールを処方しており、本当にびっくりした。他の治療をして無効だったならまだしも、いきなり使用するなんて・・・。
 また、神山潤先生の呼びかけで「子どもの眠り研究会」が発足し、第1回集会が学会中に開かれ、約40人の小児科医が参加した。夜更かしなどの子どもの睡眠をめぐる諸問題について神山先生より報告があった。私自身、診療していて今の子どもの夜更かしには驚いているし、塾通いで帰宅が22時を過ぎる小学生、中学生に同情を感じずにはいられない。22時や23時に就寝する乳幼児は全く珍しくも何ともなく、「どうしてこんなに遅くに寝かすのか?」と尋ねると、「お父さんがお風呂に入れるから(お父さんの帰宅が遅いから)」という答えがほとんどである。子どもの睡眠は家庭の問題だけではなく、社会の問題でもある。しかし、日本社会は子どもよりお金を選んだのだと神山先生は話された。
 「子どもの眠り研究会」に参加した医師は当然睡眠の問題に関心のある小児科医だが、自分達で睡眠ポリグラフィをやっているのは大阪大学だけで、手間がかかりマンパワーが必要という理由から、自前で検査することには消極的なように見受けられた。アメリカの小児の睡眠の学会に参加した某大学教授は、「アメリカではOSASばかりでつまらなかった」という旨の発言をされていたが、小児のOSASの有病率は3%ぐらいと言われており、珍しい病気ではない。耳鼻咽喉科におまかせということなのだろうか? RLSに注目が集まっているのも、睡眠ポリグラフィを実施しなくても診断可能で、薬剤治療が可能なためではないだろうかという疑いを持った。実際、小児科以外のバックグラウンドを持つ医師も小児のRLS診療に参入してきている。
 睡眠は単に個人の問題だけではなく社会的な課題であり、小児の特性を知り、全人的治療が可能な小児科医がバランスの取れた小児睡眠医療をリードしていかなければならないと改めて思ったのであった。

大阪大学大学院子どものこころの分子統御機構研究センター 加藤 久美 記


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