臨床神経生理技術講習会を受講して
 2006年8月5〜6日に日本臨床神経生理学会の主催で開催された、「第2回臨床生理技術講習会・東京」(会場:東京医科歯科大)を受講した報告記です。
 私は神経内科医として数年の臨床経験を経て、今年専門医を取得し、名目上は神経内科医として独り立ちしている筈の年代です。しかし睡眠領域を学ぶにあたり、恥ずかしながら電気生理関係の検査を直に自分の手で施行した経験が少なく、今回を機に一から勉強し直したいと思い参加してきました。今回の講習会では「脳波初級者」「脳波アドバンス」「筋電図・神経伝導」の3つのコースが設定されていましたが、上記のごとき事情のため、京大高次脳機能総合研究センターの名札をやや隠し気味に掛けながら、「脳波初級者コース」に参加してきました。
 まず1日目は各コース共通で、「臨床神経生理におけるME技術」「アメリカ合衆国における脳波検査技師認定登録制度の現状」「神経伝導検査と針筋電図の基礎知識」の講義がありました。「ME」と「伝導検査・針筋電図」は、これまでのぼんやりとした経験的知識を、整理して頭に詰め込み直す機会になりよかったのですが、内容は教科書的な事柄が中心で、周りの熟練した技師さんたちには平易な内容だった様子です。面白かったのは、7月までアイオワ大学にみえたという藤原久子先生の「アメリカの技師制度」のお話でした。アメリカでは、ひと言で生理検査技師といっても、更に細分化された各分野で専門技師制度が確立していること、それぞれに登録制度があること、また脳波技師認定試験では筆記・面接試験があり、特に面接では実際の症例について試験官より詳細な質問があり的確な回答を求められること、電極装着も相当な質の高さが要求されることなど...普段あまり馴染みのないアメリカの技師制度が詳しく紹介され、質疑応答でも「日米比較して、認定技師の地位の高さは違うのか」「認定技師を取得していると給料は上がるのか」など、興味深い質問が寄せられていました。最後にアイオワのsleep labがスライドで紹介されましたが、大きな個室やベッドが確保され(働く技師さんも皆かなり横方向に大柄)、睡眠医療先進国の整った設備に皆驚いている様子でした。
 2日目は各コースに分かれ、「脳波初級者コース」に参加しました。最初に青木病院の末永和栄先生の「デジタル脳波記録」の講義がありましたが、豊富な脳波記録の提示を基に、ご自身の経験を背景に巧妙な語り口でお話しされていたので、引き込まれるように講義に聴き入っておりました。紙記録からデジタル記録への過渡期に脳波に関わるようになった自分は、それぞれの利点・欠点など全く把握していなかったのですが、あまり教科書に載らないような"生きた"情報を聴くことができ、今回東京まで来て最も収穫になったと思える講義でした。午後の脳波と誘発電位のハンズオンセミナーは、教室の真ん中に被験者を座らせ、講師が電極装着や測定を実際に行い、参加者とdiscussionしていくというスタイルでした。特に参加者自ら実技に参加するというわけではありませんでしたが、どうやら施設間でかなり手技にバラつきがあることがわかり、それなりに盛り上がったdiscussionとなっていました。例えば本来誰が電極装着しても部位が同じになるはずの10/20法でも、Fp1-Fpz-Fp2の間隔が不均一になりやすく、本来の装着部位に対してFp1, Fp2を皆やや外側につけたがる(無意識に他電極と等間隔にしたくなる?)傾向があることなどが明らかになるなど、個々の手技を確認するよい機会となっていました。
 ところで会場を見渡してみると、かなり幅広い年齢層の方々が参加していましたが、その8割くらいは女性で、話している内容からも、参加者の大半は検査技師さんだったようです。講習会のサブタイトルに「学会認定医・認定技術師をめざす人へ」とあるように、来るべき認定試験の受験に向けて、自分の技術を再確認したいという技師さんの参加が多いように思われました。
 個人的には、睡眠のセクションはなかったものの、神経内科医が睡眠に携わるスタンスとして、客観的な神経生理検査を重要視していく必要性を再認識させられた気がします。自分にとっては脳波初級者コースでもお腹いっぱいの内容でしたが、一方で、自分が何が分かって何が分かってないのかを、さらにこの先気付くには、やはり経験症例数を増やしていくしかないと痛感しました。もうしばらく場数を踏んで、来年はアドバンスコースを受けてみようと思います。
 最後に、臨床生理技術講習会は、自分のような初学者のみならず、ある程度臨床経験のある医師や検査技師がその経験的知識を整理するには良い機会だと思います。PSGを基盤とする睡眠検査に携わる方々には、次回に一度参加されてみることをお勧めいたします。  (京都大学高次脳機能総合研究センター 小栗卓也 )


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