ケアンズに行ってきました
 第5回Congress of the World Federation of Sleep Research and Sleep Medicine Societies (WFSRSMS:世界睡眠学会集会)が、2007年9月2日から6日にかけてAustralia, Cairnsで開催されました。Cairnsは日本からの直行便を利用すると約7〜8時間で行くことができ、意外と学会参加するにはアクセスのよい場所にあります。また、なんといっても、オーストラリア北東岸に延々2000km以上にも渡って連なる巨大な珊瑚礁地帯グレートバリアリーフ(G.B.R.)への玄関口となっていることも、この地を有名にしている理由の一つでしょうか。

Trinity Bayに面した無料プールのCairns Esplanade Lagoon

 初日の学会場での参加登録時に、今回の学会参加予定者のメールアドレス入りの名簿が配られましたが、主催国のオーストラリアは当然として、U.S.Aに次いで3番目に出席者が多いのが日本からの参加者であり、顔なじみの先生方といろいろ歓談することができました。私は、WFSRSMSには今回が初参加でしたが、これまで参加をしてきたAPSSやESRSと比べるとかなりreviewを中心とした百花繚乱的な内容とシンポジウム構成だった印象を受けました。計5日間にわたる期間中、ほとんどのプログラムはシンポジウムないしパネルディスカッションにあてられているため、学会ならではの、"ものめずらしい"研究への取り組みを聞くことができる一般演題の発表は、夕方の2時間のセッションが2日間組まれているだけだったのは少々物足りないといったところでした。

学会場となったCairns Convention Centre

 学会全体を通して、そのボリュームを占めている印象を受けたのは、やはり睡眠呼吸障害と不眠に関する領域です。特に不眠に関しては、これまでの流れを受けて、認知行動療法(C.B.T)の効果や、睡眠導入剤との比較、介入対象を異にした発表が多数みられました。当然ながらExhibitionでも、いずれも企業のスポンサーがつきやすいこともあり、華やかにサンプルが置かれ、コーヒーやアイスクリームが振る舞われ、クイズで時計のプレゼントなど、多くの参加者でにぎわっていました。また、年々他の関連学会でもそうであるように、本学会でも小児の睡眠、特に発達障害関連の演題が増えてきているように思えました。個人的に興味のあったRLSやRBDの領域についてのセッションは、数名の高名な先生方のレクチャー形式の発表があり、多少の質疑応答で終了となりました。前回のPragueで開催されたESRSのセッションで感じた熱気と比較すると、私個人としてはややさびしい印象を受けましたが、特にRBDのセッションは、内容的には2004年から2006年に相次いでNeurologyやEuropean Journalに発表されたα-synucleinopathyとの関連及びNeuroimagingを主体とした機能・診断評価といった内容を主に展開がなされ、その領域のmajorな先生から包括的な講義を受けられたことは国際学会ならではと思います。

参加者で賑わうExhibitionのブース

 学会3日目の午後は、学会全体が完全に閉じ、Social ProgramとしてG.B.Rへクルーズが組まれており、多くの参加者がCairnsを満喫しに大珊瑚礁の世界へ旅立ちました。(G.B.Rが真ん前に広がるCairnsで学会を開いているのですから、とても健全なプランニングでみんな大喜び。)多くの珊瑚礁帯は本土(港)から1時間以上も沖に高速艇で出かけていき、通常そのReefの一角にPontoonと呼ばれる巨大な浮き桟橋があり、クルーズ船はそこに横付けされるようになっています。このPontoonをベースキャンプとして、シュノーケリングやダイビングなど各人さまざまなアクティビィティーを行います。

gincourt ReefとPontoon

 最終日の前日には恒例のCongress Partyが海辺の公園を半分借りきって賑やかに開催されました。シドニー大学の睡眠生理学に取り組んでおられるという先生と知り合いになりました。彼女はマレーシアからの移住者で"Sleep Position"というポストに現在ついていると言っておりましたが、オーストラリアでは、彼女が表現する"Sleep Position"(ひょっとしたら海外ではこのような表現は常識なのかもしれません。私は初めて聞きました。)なるポストが、いわゆる睡眠を専門に研究・診療するポストとのことでした。彼女はあくまでもresearcherとのことで、Glycemic indexと睡眠との関連を研究しているとおっしゃっておられました。この方の同僚でシドニーで"Sleep Position"についておられる睡眠臨床医との歓談でも、オーストラリアの睡眠臨床現場では、Insomniaの患者が来たらPsychiatristに紹介し、Movement DisorderやRBDの患者が来たらNeurologistに紹介するとのことで、結果的に"Sleep Position"と標榜する医師は、実質的には睡眠呼吸障害患者を主に担当することになっているとのことでした。このため、外来診療業務でも圧倒的にCPAPの処方に費やす時間が多くなるようです。このようなお国事情は各国様々でしょうし、オーストラリア内の施設間によっても実際には異なっているのではないかと思いましたが、分業意識がかなり強い印象を受けました(この分業がうまく有機的に働いて患者を診療できているのかは不明です)。

Congress Partyに出現したアトラクション

 ちなみに、私がこの学会記を作成するのは役不足とつくづく思いましたが、なぜか今回は頼りのOSHNet理事長が参加されていないことに現地で気づき、さらに学会発表があるため絶対参加されると思われていた指導医のImakim先生が、トラウマティックアクシデントにより急遽泣く泣く参加を取りやめるというハプニングが続いたため、私が代打で書かせていただきました。WFSRSMSの体験記のような文面となりましたが、全般的な印象として、WFSRSMSは睡眠の博覧会のようなものなのでしょうか、いわゆるメジャーどころの学会誌のレビューを読んでいる印象を受けました。全体像をつかむのには効率よく勉強できる部分も多いと思います。逆に、日頃論文を読んでいる以上に知識の補充がなされにくいとも思います。(私がG.B.R.と熱帯雨林に旅立っていたからかもしれません。)。幸いにも今回のWFSRSMSに参加でき、学会記を書く機会を与えてもらったおかげで、あまり意識していなかった国際学会のそれぞれの特色を考える良い機会になりました。2008年には第19回ESRSがGlasgowで開催されます。また、WFSRSMSとは違った国際学会の魅力をより味わえることを楽しみにしたいと思います。

大阪大学保健センター 足立浩祥 記


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