第8回World Congress on Sleep Apneaに参加して
 去る2006年9月27日から30日にカナダ・ケベック州のモントリオールで第8回World Congress on Sleep Apneaが開催されました。実は今までこの学会に参加したことがなかったのですが、シンポジストとして招待していただいたこともあり、興味半分・緊張半分で参加しました。今回の大会長がDr. Jacques Montplaisir、副会長がDr. Gilles LavigneということでいわゆるSAS一辺倒というタイプではなくオリジナリティのあるシンポジウムもいくつか見られ変化に富んでいて面白かったです。

 一日目の朝、"Relevance of sound recording in polysomnography."という少し角度の違うシンポジウムがあり、5人のシンポジストの一人としてSleep bruxismについて講演させていただきました。が、自分の前のスピーカー達のプレゼンの構成をみて、用意してきたプレゼンのPlanがまずい!! と気づき、そのプレッシャーを受けたまま登壇しちゃいました。おまけにプレゼンの最後の一番自分で慎重でなければならなかったところで、座長から「残り一分!」と急かされ、重要なポイントを丁寧に伝えられないまま終わってしまいました。すでに手遅れとはいえ、この学会の聴衆が求めるものをあらためて再認識し、むしろ用意不足だった自分が情けない…とその日は自己嫌悪で終わり不貞寝してしまいました。

 一日目の落ち込みから少し復活して迎えた二日目、シンポジウムがなかなか興味深くてとても勉強になりました。
個人的に面白かったシンポジウム・講演は
"Control of ventilatory and upper airway patency."
"Placebo effects in sleep."
"Movement disorders in patients with OSAS."
"Social and societal outcomes in sleep apnea"
一つ一つ内容を説明するほどスペースがありませんので、ここはSleep Medicine(Vol.7, Suppl.2, September 2006)の抄録に譲りたいと思います。

 三日目にはPlenary debateとして"Ambulatory monitoring in the diagnosis of sleep apnea: pro/con." ということでDr. Neil Douglassと Dr. Nancy Collopがユーモアを交えながら交代で2回ずつ自分達の主張を述べましたが、どちらも論理的で納得させられるものがありました。「PSGのどこがGold Standardなの?クソッタレめが!」みたいな発言もあったのですが…(もちろんジョーク交じりです。でも、日本の学会でもProとConを議論するシンポジウムを土壌を作っておかないと将来優秀な睡眠医療専門家が育たないかも…)。このdebateの最後に、「両者の意見を聞いてAmbulatory systemが良いという意見になった人は?」という座長から会場への問いかけに手を上げたのはほんの一握りであり、「それではやはりPSGがGold standardだと思う人は?」という問いにはほとんど全員が挙手した光景、なんとなくアメリカ式睡眠医療のキナ臭さも感じつつ、とても印象に残りました。ちなみに私はオロオロしてどちらにも手を上げないという極めて日本人的行動に出でしまいました。しかし、少なくともSAS医療の中でどちらを用いようとも、その手法の利点と欠点を知り、有効に使うための判断をしっかりと行う、という医師や医療従事者の医療に対する倫理観次第なのだろう…と感じざるを得ませんでした。

 付け足しになりますが、私の領域である歯科関係では口腔内装置と口腔外科処置に関するシンポジウムがそれぞれありました。しかし、これらがOSASを管理する上で有効な手段の一つであると再認識しつつも、特定の人達がこの領域をリードしていることには違和感というか不安を覚えています。どうもProとConを議論できない(もしくは、させない?)雰囲気で、この調子じゃアカンな、と呟きたい気分でした。

 今回第8回World Congress on Sleep Apneaに参加して、APSSとは違いSASに特化した学会のようであるが、逆に各講演や研究発表を通してSASや睡眠関連疾患を捉える視点や知識・今後の方向性にはこんなにものScientificなバリエーションがあるものなんだなぁ、と実感できました。また、日本の学会でSAS関係の研究を見ていて、「これ以上進歩できないつまらない分野」と感じ始めていた自分の頭の堅さが取れたことも大きな収穫でした。

 さて、学会は初日の朝に轟沈し、その日一日立ち直れず、少し持ち直した2日目は充実し、3日目はそこそこ(?)…といったところでした。が、学会の少し前からモントリオール入りして、Dr. MontplaisirやDr. Lavigneとの共同研究のデータ処理をする傍ら、かつての同僚や現地の友人達とも会うことができたので、私にとって「第二の故郷」であるモントリオールをほんの少しの間でしたが楽しむことができてなかなか良い滞在となりました。

(松本歯科大学総合歯科医学研究所 加藤隆史)

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