activity新PSG睡眠塾

第2回新PSG睡眠塾 参加記

初めまして。大阪市立総合医療センター呼吸器内科研究医の宮本奈津子と申します。初参加で睡眠医学初心者の私が、僭越ながら参加記を書かせていただくこととなりました。
まず、私が睡眠医療に関わり始めたきっかけについて、少しだけ触れさせてください。最初は大学6年生のとき、約5年前に関西電力病院神経内科で実習させていただいたとこのことです。このとき立花先生のお名前を耳にし、一度睡眠症例検討会に参加させていただいたという思い出がありました。その後、呼吸器内科に専門を決めた後は、最初の赴任先の北市民病院で熱心な検査技師さんがPSGの実施からraw dataの解釈まで全て担っているのを横目で見ていましたが、まだ積極的な興味は持てていなかったように思います。しかし、現在の勤務地である大阪市立総合医療センターに移り、今回私を睡眠塾へ伴ってくれた上司に出会い、睡眠医療に対する考えが変わりました。その上司は、呼吸器疾患を持つ患者を何とか良くしたいという強い思いから、独学で睡眠医学に出会い、深く学ぶためにかの有名なメイヨークリニックへの留学を実現したような人です。私はその先生にくっついて、それまでは急性増悪による入院と呼吸機能の悪化を繰り返していた肺結核後遺症によるⅡ型呼吸不全の患者が、夜間Bilevel PAPを導入することで約2年間入院せず明らかなQOLの向上を示している症例などを見る機会ができ、睡眠医療の重要さを感じるようになりました。

さて、長くなりましたが、本題に入ります。第2回新PSG睡眠塾は、なんと札幌を舞台に開催されました。しかもときは12月。睡眠塾前日の17日に札幌入りしました。生粋の大阪人である私としては寒さと氷の張った道路を見ただけで日常を離れた気分でした。

 

翌日18日の睡眠塾は、朝9時半から19時までみっちりのスケジュール。医師と検査技師それぞれによる講義が中心で、約2時間のグループディスカッションが含まれていました。まず一限目は立花先生による「睡眠医学の歴史とPSGの位置づけ」についての講義。一番初めに今回の睡眠塾のテーマとして「互師互弟」という言葉を掲げられました。講義する側からされる側へ教えると同時に、される側からも積極的に意見を投げかけるなどして講師に学んでもらうような場としたいという思いが伝わりました。講義の内容からは、睡眠医学としての発展は意外と最近であることや、その幅広さ、そして睡眠障害を語るときにはやはりPSGが必要であることを学びました。睡眠時呼吸障害の患者が大多数ではあるものの、それが睡眠障害のごく一部でしかないし、睡眠障害を扱う場合に睡眠時呼吸障害しか診ないことの危うさを教えられました。約1時間の講義でしたが、睡眠医学初心者の私にもわかりやすく、睡眠医学の全体像や現在の日本における睡眠医学発展における問題点もうっすらと理解できるような内容であったと記憶しています。

引き続いての講義は、PSG実施時のinteractionについてのもので、「医師と睡眠技士」及び「睡眠技士と患者」それぞれについて時間を分けて語られました。医師からは何を目的としての検査であるのか明確にすること、睡眠技士からはそのオーダーを受けての心構えや、検査実施時や結果解釈時の着眼点について語られました。また、患者に接する際の検査技師の心がけや検査前の質問項目など、大阪回生病院と掛川市立総合病院で実施していることについて教えていただきました。睡眠は患者自身自覚していない現象であり、それを正しく捉えるためには患者自身も重要と考えていない事実までこまめに聞き出す作業が必要であることを、睡眠技士が理解し、実施しているという普段の診療について聞き、非常に感銘を受けました。睡眠診療の特殊性を感じたのもひとつですが、大きな病院で検査技師との直接の関わりがほぼゼロに等しく、検査オーダーもコンピューター上で行う私の日常診療の中で忘れかけていた関わりを教えられたためです。

さて、その後、「睡眠診療における簡易呼吸モニター」、「RPSGT取得のすすめ/睡眠医学の学習方法」と講義は続きますが、内容は割愛してグループディスカッションに移ります。A~Eの5つのグループにわかれてそれぞれのグループごとにテーマに沿って話し合いました。私は光栄にも立花先生と同じグループで、「睡眠時呼吸障害に特化した睡眠診療がうまくいくためにはどんな条件が必要か」というテーマに沿って話し合いました。同じグループ内には耳鼻科の先生や検査技師の方も含まれており、多角的に、睡眠医療に対するそれぞれの立場の考えを聞くことができ、更に睡眠医療への理解が深まったように感じました。

 

その日の夜はすすき野にて懇親会が開催され、もちろんしっかり参加させていただきました。地元北海道から南は沖縄まで、全国からの参加者とお酒を飲み交わし、北海道の魚介に舌鼓を打ちながら、睡眠医学以外のこともざっくばらんに語り合いました。ここでとても印象に残っているのは、札幌山の上病院の野中先生とお話できたことです。野中先生の医師としての信念について聞き、目から鱗の思いでした。野中先生が睡眠医療に携わるようになったきっかけも、神経疾患を持つ患者を何とか良くしてあげたいという強い思いからであったと聞き、わが上司に通じるものを感じました。二人とも素晴らしい臨床医で、私のはるか遠い目標となっています。

 

懇親会のあと、ホテルに帰ったあとも睡眠医学に熱い思いを抱く主催者達を中心とした一行は、ロビーにて夜中の1時まで語り合いました。その中に、なぜか私も参加させていただきました。主に睡眠医学の発展のためにできることについての語らいで、看護師にPSGの実施を担わせる、そのためにOSHNet主催者の中から看護学校の講師を出すというかなり斬新なアイデアも登場していました。その中で、主催者の方々の睡眠医学への情熱を感じたのと同時に、日本の睡眠医学を引っ張っているこの団体は、本当に魅力的な臨床家の集まりであると感じました。
翌日は朝から野中先生の神経疾患における睡眠呼吸障害についての講義を聴き、やはり野中先生から前夜に受けた感銘を思い出し、尊敬の念を新たにしました。睡眠塾は午前中のみで終わりでしたが、その後、札幌山の上病院の見学というオプションまで付いており、大満足にて帰路につきました。

「互師互弟」。その言葉は、参加者それぞれを「師」とも呼ぶほどに尊重し、どんな意見も真摯に受け止め、それを解決していこうという主催者達の気持ちを表現したものだと思いました。そして睡眠塾の主催者も参加者も、睡眠医学を発展させていきたいという強い思いのもとに結束した素晴らしい臨床家の集まりであると強く感じました。そんな方々に出会い、一臨床医として新たな世界を知ることができた濃厚な2日間でした。PSG睡眠塾に参加できたことを、心から感謝しております。

大阪市立総合医療センター 宮本奈津子 記

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